2月に桜木町で『ポータブルトイレットシアター』を上演しました。終演後、動く歩道で佇んでいる93歳の俳優・おかじいを見て、この男は横浜の夜景が似合うなと思いました。おかじいはいつもいい夢を見させてくれます。
今、おかじいは家に引きこもっています。5月に埼玉で上演する予定だった新作はコロナの影響で中止となってしまいました。この間、様子を見に行ったら、庭で雀に餌をあげていました。「雀がわしを待っている。わしは死ねない」。演劇によって生かされていた男は、今、雀によって生かされています。
でも、もちろん、演劇のことは片時も忘れません。「監督、舞台がダメなら映像にしましょう!」といろいろアイディアを出して、僕を元気づけてくれます。
僕は、今、雀に餌をあげているおかじいの映画を作ろうかなと考えています。横浜の夜景のようなきらびやかさはありませんが、このささやかな時間もきっといい夢になるだろうと思っています。