撮影:加藤甫(かとうはじめ)
Q1 チャレンジ・オブ・ザ・シルバーでは、横浜市で継続的なワークショップの他、県内各地でシニアを対象にしたダンスワークショップを展開しています。ダンサーを対象にしたワークショップと異なる点や大切にしていることはありますか。
対象がシニアでもダンサーでもあまり大きな違いはありません。ワークショップを通じて、その人の身体感覚が磨かれて、いろんな「気づき」に繋がったらいいなと思っています。正解を与えるというよりも、きっかけづくりをしているため、もしかしたら遠回りかもしれないけれど、「気づき」を得ることで今まで当たり前だと思っていたことから視野が広がる。それは参加者がだれであろうが変わらないと思います。
Q2 2019年1月のプレワークショップから6年が経ちます。参加しているシニアの皆さんにどのような変化がありましたか。
周りと自分を比べないようになったと思います。ワークショップでも作品創りでも常に探っているのは、身体の不思議。身体のつくりがどうとか、ダンスの経験がないとかは、何の問題もないということを共有できるようになったので、皆楽(らく)そうですよね。それぞれがとても個性的で、でも自然で、自分の心に素直。それは身体と心が一致してきているということ。あとは、皆私に怒られるから(笑)、協働意識で頑張ろうと、励まし合っている感じがあります。皆で一緒にやることに価値や大切さを感じているようです。
Q3 チャレンジ・オブ・ザ・シルバーの取組が評価され、ドイツのケムニッツ市でシニアたちへ指導・振付を行い、2025年1月にダンス作品が上演されたと伺いました。どのように作品づくりを進めていきましたか。
日本でのクリエーションを活かしつつ、ヨーロッパの人たちはジェスチャーやポーズが得意なので、あえて形(フォルム)ではないこと、例えばとにかくゆっくり歩くということから始めました。
Q4 作品づくりのプロセスで大切にしていることを教えてください。
正直であることですね。いつもの自分のままで、良いときも悪いときも淡々と平常心でその場にいること。上下関係を作らないで、一人の人間としてちゃんと瞬間的に向き合って、リスペクトするというのが、皆の意識にあるような気がします。また、このプロジェクトで最初に創った作品が映像だったため、生身でぶつからずに、フィルターを通して楽観的にお互いを見ている。映像監督の金巻さんがプロジェクトに関わり続けてくれているのも、良いバランスを生み出している一因かなと思います。
Q5 2025年3月の公演は、2024年に上演された『Largo』の第二弾ですが、劇場も、シニアのメンバーも異なります。どのような変化があり、今回はどのような作品を上演しようと取り組んでいますか。
第二弾にあたっての変化としては、皆さん前回の本番で手応えがあったのか、不安がなく、何かを信じている。新しい人たちも「何かありそうだ」と思ってくれている。それぞれが自身の課題を見つけて、ただ変化していくだけじゃなくて、積極的に変化させていくことを楽しむ力がついてきました。ありのままの自分を舞台に置く勇気を皆でもっていこうという感じです。
今回の舞台も、今後のプロジェクトの展開としても、「シニアがそんな表現をするんだ、それも身体表現なんだ」ということを楽しんで打ち出していきたいと思っています。
チャレンジ・オブ・ザ・シルバーとは
安藤洋子さんが、神奈川県のシニアと新たなダンス表現を創り出すプロジェクト。ワークショップを重ねながら、年に一度、ダンス作品を創作・発表しています。2025年3月15日(土)に神奈川県民ホール大ホールにて『Largo』を上演予定。
https://kyosei-kyoso.jp/events/cots_largo/