共生共創していく人々の声 吉藤オリィ × 大金康平

分身ロボットOriHimeの 命が彩るリーディング 「星の王子さま」

「OriHime」は、外出困難な人が自宅等から遠隔操作することで、社会活動へ参加できるようになる分身ロボットです。昨年6月には、都内でOriHimeが働く「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」もオープン。同カフェでOriHimeの出演映画「星の王子さま」の完成披露試写会が行われ、創作過程のドキュメンタリーを監督した大金康平さんと、OriHime開発者の吉藤オリィさんが対談しました。

分身ロボットOriHimeとは?

──OriHimeとはどんなロボットで、なぜ開発されたのでしょうか?

吉藤:OriHimeは、人の孤独を解消することを目的に、私が作った分身ロボットです。事情があって家から出られない人がOriHimeを遠隔操作すると、外にいる人と会話したり、景色を見ることができます。私たちが今いる「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」(東京・日本橋)では、外出困難な従業員たちがシフト制でOriHimeのパイロットになり、お客様にサービスを提供しています。

開発の理由をひとことで言うと、もう一つの身体が欲しかったんです。私の本名は「健太朗」ですが、子どものころから不健康だし、太っていないし、朗らかでもなかった。勉強も運動も苦手で、不登校。家で折り紙ばかり折っていたので「オリィ」と名乗るようになり、それがOriHimeのネーミングにもつながっています。

学校に通えなかった当時は、居場所を失って、心の成長もついていけなくなると感じました。もし自分の身体のコピーがあって、そこに意識だけ乗り移らせて学校へ瞬間移動できたらいいのに、といつも妄想していて。時を経て、OriHimeを作ったんです。OriHimeはAI(人工知能)で動くパートナーロボットではなく、自分の意思で操作する分身ロボット。なぜなら自分が、学校に行きたいからです。

もともと私自身が引きこもりや入院を経験していたので、家や病院から出られない人に使ってもらおうとしたのがスタートでした。その後、事故で頚椎を損傷して20年間寝たきりだった私の親友や、ALS患者の方々と出会い、彼らにとっては1センチメートル先が手の届かない「遠隔」なのだと知りました。彼らが自分の意思でOriHimeを動かせるように、視線や顎や表情筋で操れる機能なども進化させていきました。

OriHimeに宿る命

──OriHimeが出演するリーディングが作られた経緯を教えてください。

大金:2020年夏、OriHimeが演じるリーディング「ちいさなちいさな王様」を撮影するというお話をいただきました。企画者は神奈川芸術文化財団さんで、そのときに初めてOriHimeの存在を知りました。実は僕も名前が「康平」なのに、体調を崩しがちな子どもで、小学校を休んでいた時期もあったんです。当時の感覚が、今回の映画に出演したOriHimeのパイロットの方々と関わったり、芝居のアイデアを考えることに役立ったと思います。

吉藤:「ちいさなちいさな王様」を拝見しましたが、良かったです。OriHimeにちゃんと命を感じました。映画の中では、OriHimeを操作するパイロット役を務めたさえさんでもなく、無機物のロボットという入れ物でもなく、両者が融合した役者という新たな形になっていましたね。だから映像が始まるとすぐ、ストーリーに没入できたんです。

大金:めちゃくちゃ嬉しいです。まさにそこを目指して制作していました。僕たちが本当に目指すべきなのは、さえさんのように事情があって外に出られない方々が、OriHimeを使って芝居することが当たり前の世の中。ちょっと先の未来に向けての作品を作れたらいいな、と思っていたんです。

吉藤:ロボットが演劇をやるということは、確かにキャッチーかもしれません。でもこの作品は、そこだけではないと思います。

大金:OriHimeにはすごく存在感がありますね。「ちいさなちいさな王様」の撮影期間は4日間でしたが、稽古の段階でロボットではなく、さえさんと一緒にお芝居を作っているという気持ちになりました。

総勢14名が出演

──衣装も凝っていましたね。

吉藤:王様の赤いガウンとか、良かったですね。私たちが服を着ることで自分を表現するように、衣装でキャラクター性を表現してもらえました。

大金:かわいかったですね。

吉藤:OriHimeの開発当初は、猫耳や尻尾をつける考えもあったんです。でもあえて、やや物足りないぐらいのシンプルなデザインにしました。たとえば能面は無表情なのに、見る人にあらゆる表情や感情を想像させますよね。そんなふうに、想像力を喚起させる余地を残しておきたかったんです。

大金:OriHimeのフォルムはどれも同じですが、3体が横に並んでいたら、入っているパイロットが違うから、3体とも全く別の存在に見えるのが面白くて。

吉藤:あるモノを見たときにどう感じるかって、人それぞれで全然違うんですよね。目から入ってくる情報が、見る人それぞれの脳を通してフィルタリングされ、受け取り方が変わるので。見る人が自由に想像を広げていくためにも、情報量はシンプルなほうが良いと思うんです。

大金:完成したばかりの最新作「星の王子さま」では、14名分の役をOriHimeがそれぞれ違う衣装を着て演じています。最初は4名のOriHimeパイロットの方に出演していただく予定で募集したら、14名もの方々から応募があって。実際にOriHimeを使ってオーディションをしたところ、一人ひとりが素敵だった。そこで脚色・演出を担当した演劇家の藤原佳奈さんや関係者の皆さんとも相談して、全員が出演できるストーリーに直しました。

出演したあるパイロットの方が、「OriHimeでお芝居をして、病気以外のことを考える時間ができた」と話していたそうです。それを聞いて嬉しかったです。

この先に広がる夢

──今後やってみたいことはありますか?

大金:もしまた機会があるならば、僕の個人的な好奇心ですが、パイロットの方にOriHimeで演出もやってもらいたいです。OriHimeを介してどれだけコミュニケーションが実現できるのか、挑戦してみたい。芝居というのは、突き詰めればコミュニケーションの世界ですし。

吉藤:私はOriHimeで舞台挨拶してみたいですね。このカフェで映画の上映会をした後に、OriHimeたちが作品中で演じたキャラクターになりきったまま、入り口に並んでお客様をお見送りするというのも面白そうです。

大金:演劇が終わった後によく見る光景ですね。

吉藤:それです。パイロットの皆さんが普段の自分と違うキャラクターで接客することで、どんなものが生まれるのかに興味がありますね。

大金:テーマパークみたい。

吉藤:そうそう、キャストみたいな。物珍しさだけであれば、映画もカフェも一回行けば十分ですよね。でも繰り返し訪れてもらえるということは、その動機はもはや珍しさだけではないはず。OriHimeの中に入っているパイロットと自分との接点を見つけたり、関係性に何か通じるものを見出して、また会いたくなったりするんだと思うんです。

大金:OriHimeたちの個性に惹かれるんですね。

吉藤:私はOriHimeというロボットをツールとして作る立場ですが、自分が目指していたものと、今回のリーディングに共通項を感じます。リーディングを観た方から「命を感じた」と言っていただくと、そこまでたどり着けているのかなと思ったりします。

OriHimeプロジェクト「星の王子さま」

稽古風景/OriHime越しに生まれる、パイロットとの温かい交流
ドキュメンタリー「ここにいる。〜分身ロボットと創る『星の王子さま』〜」

個性を引き出すOriHimeの衣装にも注目

●プロフィール

吉藤オリィ(よしふじおりぃ)

奈良県出身。
株式会社オリィ研究所代表取締役所長。デジタルハリウッド大学大学院特任教授。早稲田大学創造理工学部在学中、遠隔で操作できる人型分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発し、オリィ研究所を設立。米Forbes誌が選ぶアジアを代表する青年30人「30 Under 30ASIA」選出。2021年度の「グッドデザイン賞」15000点の中から1位の大賞に選ばれる。
書籍「孤独は消せる」「サイボーグ時代」「ミライの武器」

大金康平 (おおがねこうへい)

栃木県出身。
映像作家。日本大学藝術学部映画学科監督コース卒業。中学生のときから短編映画制作に取り組み、大学在学中は役者として演劇作品にも出演。NHK/Eテレ「シャキーン!」「ごちそんぐDJ」をはじめ、子ども向け番組やショートフィルム、ミュージックビデオの演出・撮影など、幅広く手がける。「映像作家100人 2018/2019」選出。

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