「おもしろがる力」で人と人が通じ合う社会をつくる

カプカプ活動写真

自分を表現できてそれを誰かに楽しんでもらう場に

横浜市旭区にある広大な団地の一角に、地域の人たちの憩いの場として愛されている場所がある。おいしいお菓子とコーヒーをいただきながら、ほっとひと息。スタッフもお客さんも関係なく笑顔であいさつが交わされる。
「カプカプひかりが丘(以下カプカプ)」は、西ひかりが丘団地の商店街にある障がいがある人たちが働く喫茶店だ。「お客さんのなかにはカプカプーズ(カプカプで働く人)に会うのを楽しみにしている方も多くて、ありがたいことにいつもにぎわってます」と語ってくれるのは所長の鈴木励滋(すずきれいじ)さん。喫茶スペースを囲むように、カラフルなポストカードや手編み
のポーチ、かわいいアクセサリーなど、さまざまな雑貨がところせましと並べられている。1997年に地域作業所として
オープンし、翌年には喫茶カプカプをスタート、今ではカプカプーズがつくった絵画や編み物のほか、リサイクル品の販売等
も行う雑貨屋も兼ねている。「みんな接客をしながら、常連さんたちとおしゃべりしたり握手したり。ときには描いたイラ
ストを見せたり、歌や踊りを披露したりすることも。カプカプーズそれぞれが自分を表現できて、それを誰かに楽しんでもらえるような場にできたらと思ってます」。

カプカプ活動写真-2

ワークショップで「おもしろがる力」を養う

カプカプではカプカプーズとスタッフで歌やダンス、ラジオ放送など、さまざまな活動を行っている。「カプカプーズの
自己表現は、楽しみ方がわかりにくいものや、楽しみ方がまだ発見されていないものもあります。そこで考えたのがスタッフの『おもしろがる力』を鍛えることでした」(鈴木励滋)。その方法のひとつが、アーティストを招いてワークショップを
開くことだ。2011年から新井一座(新井英夫さん・板坂記代子さん・ササマユウコさん)と身体を動かし音を奏でるという「体奏ダンス」をはじめ、同年絵本作家のミロコマチコさんと絵描きのワークショップをスタート。2018年からは、文化活動家のアサダワタルさんと、語りに歌に何でもありのワークショップ「カプカプラジオ」を楽しんでいる。
鈴木さんはこうしたワークショップはカプカプーズのためだけではないという。「大事なのはスタッフたちの『おもしろが
る力』を伸ばすこと。アーティストたちがカプカプーズのさまざまな表現をどんな風におもしろがっているのかを、スタッ
フたちに体験してもらえたらと思っています。アーティストによるワークショップは、わたしたちにまとわりついた『○○でなくてはいけない』という『常識』を吹き飛ばしてくれて、カプカプーズの表現の味わい方を学ぶ機会になっています。
そんな積み重ねで、ちょっとのことであれこれ言われなくなると『否定されない安心感』が場を満たしていくんです」。
スタッフの「おもしろがる力」が伸びることで、カプカプーズのみならずスタッフひとりひとりに潜在していた豊かな表現が遠慮なく躊躇なく、存分に発揮されていく。「ワークショップはひとりひとりの表現に磨きをかけるだけではな
く、多種多様な表現を認める場を育ててくれました。これこそ、指導や訓練をしてしまいがちな福祉施設に欠かせないものだと実感しています」。
鈴木さんはその実感を多くの人に広めたいという思いから、こうしたワークショップに携わる人たちへ向けた講座を開設し、アートの力を福祉の世界で活かせるファシリテーター(そうした場を支援する芸術家)だけでなく、福祉施設とアーティストを丁寧につなぐことができるコーディネーターも育てようとしている。
こうした講座の講師にはカプカプーズや、小日山拓也さんに加わってもらった特別版「新井一座」に務めてもらっている。
「この講座がきっかけとなって、アーティストによるワークショップを導入する施設が増えてくれたらうれしい。そしていつの日か、ひとりひとりの差異を肯定できる社会へとつながることを夢見ているんです」。ひとりひとりの表現を「おもしろがる力」を養うことが、人と人が通じ合う社会をつくることにつながっていくのだ。

カプカプ活動写真-3

〇カプカプひかりが丘

1997年に地域作業所として横浜市旭区に開設。2009年にNPO法人化したのち、2017年から制度上は生活介護事業所となっている。旭区上白根町にあるUR西ひかりが丘団地の商店街の中にカフェと工房を構え、地域の方の憩いの場として愛されている。
神奈川県横浜市旭区上白根町891-18-4-103
045-953-6666 / hikarigaoka@kapukapu.org
https://www.facebook.com/kapuhikari

カプカプ 喫茶スペース写真

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