表現する喜びと可能性を分かち合う

撮影:鈴木竜一朗

障がいのあるダンサーが集結する「ラポールダンスコンテスト」

練習室の扉を開けてそっと中に入ると、和やかに会話をしながらストレッチをしている人たちの背中が見えました。練習をしていたのは「Dance@しんよこ」。障がいの有無に関わらず、ダンスが好きなメンバーが集まり、先生の指導のもと、月に3回ほど練習しています。音楽がかかると、さきほどの穏やかな様子から一転。身体をいっぱいに使って躍動します。ジャンプが得意なメンバーは思い切り跳ね、細かいステップが得意なメンバーはすらすらと足を動かし、それぞれの持ち味を活かして踊ります。

同じ頃、別の会場では「美奈和会」のメンバーが練習をしていました。次回の発表に向け、衣裳を身に着けて立ち位置を確認しています。マイケル・ジャクソンの「スリラー」に合わせてポーズを決め、スムーズにフォーメーションを移動しながら、息を合わせて踊ります。「もう一回!」と繰り返し音楽をかけて練習する姿からは、表現する楽しさが伝わってきました。

「Dance@しんよこ」と「美奈和会」は、どちらも横浜を拠点に活動するダンスチームです。「ラポールダンスコンテスト」には初開催の2023年から3年連続で出場しています。

挑戦することが世界を広げる

「ラポールダンスコンテスト」は、横浜市港北区にある「障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下、ラポール)」が主催するコンテストです。2025年6月に開催された第3回には横浜や川崎などを活動拠点とする15チームが参加し、12名がソロ部門に出演。576名が観覧し、障がいのある人のダンス大会として全国でも大きな規模になっています。

Dance@しんよこ(撮影:葛谷舞子)

かねてよりラポールでは、障がいのある人の文化活動の発表の場を設け、ラポールを練習拠点とするダンスチームも多数参加していました。熱心な活動の様子を受け、ラポールの文化事業課長と担当者が、参加団体が互いに刺激を受ける場としてコンテストの可能性を感じ、開催へと踏み切りました。

出場は、チームに障がいのある人が所属していることが条件。楽曲を持ち込んで2人以上で参加するチーム部門と、当日渡された1分間の音源に合わせて1人で踊るソロ部門があります。

すべての発表が終わった後、チーム部門とソロ部門からそれぞれグランプリが選ばれ、その他審査員特別賞が送られます。毎年審査は激戦。結果発表はとても盛り上がるとラポールの担当者は話します。「ドラムロールが鳴ると会場のテンションが上がって、受賞して泣く方、悔しがって泣く方、どちらもいます」。

美奈和会(撮影:葛谷舞子)

出演団体にとってはどのような場になっているのでしょう。「ステージで子どもたちがお互いをフォローし合ったり、舞台に立つ楽しさに目覚めたりと、成長を見ることができています」と話すのは、「Dance@しんよこ」の保護者代表・鈴木由紀子さん。2025年のダンスコンテストでは、それぞれが好きに色を選んだお揃いのTシャツを身に着け、自分らしく踊りました。発表に向けて特別に作品づくりはせず、普段練習している曲の中から何曲か組み合わせて披露しているそう。それは練習回数や体調の波に関わらず、発表の機会に参加してほしいと思っているから。「とにかく楽しんで、自分を出せればいいのではないかと思っています」と鈴木さんは子どもたちを温かく見つめます。

鈴木由紀子さん(撮影:鈴木竜一朗)

一方で、ダウン症のある20〜50代までの10名が活動するダンスチーム「美奈和会」のメンバーは、コンテストで優勝を目指すことがモチベーションにつながっています。「障がいのある人の発表に順位が付くのはどうだろうという思いもあったのですが、メンバーたちが『賞を取りたい』と願う姿を見て、見方が変わりました」と話すのは、代表の猪野俊子さん。活動歴は30年以上で、チームワークの良さが特徴の「美奈和会」ですが、積極的に外部で発表するようになったのは、ここ数年。2023年のダンスコンテストでグランプリに選ばれたことが大きな自信につながりました。メンバーの保護者の方々も「賞をもらえることがとても嬉しい、という気持ちが子どもにあることを発見できてよかった」「悔しい、もっと練習しようという気持ちも生まれている。挑戦することで世界が広がっていくと感じます」と微笑みます。

猪野俊子さん(撮影:鈴木竜一朗)

すでに、来年度の開催も決まっているダンスコンテスト。「現在、来場者の中心は参加者とその家族や友達ですが、より多様な方に観に来てもらえたらと考えています」と担当者は話します。「また、ダンスを始めたばかりの方にも気軽に参加していただいて、人前に立つことや、褒められて自信を得ることなど、何かきっかけになったら嬉しいです」。

踊る楽しさ、認められる嬉しさ、あと一歩届かない悔しさ。様々な気持ちを味わう「ラポールダンスコンテスト」は、表現する喜びと可能性を分かち合う場として、挑戦する人々の世界を広げています。

障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール
横浜市港北区鳥山町1752
https://yrf.jp/rapport/

ラポールイベント案内:https://yrf.jp/rapport/event