Q1 2023年7月から全7回開催されたワークショップ。これまでどのように進めてきましたか?
様々な種類の打楽器に触れ、みんなでやり取りを重ねながら即興のセッションも楽曲も楽しみました。演奏は録音して聴き合い、最終回にはスプラウトらしさがギュッと凝縮したひとつの作品も生まれました。また、楽器を鳴らすだけではなく、ときには風船や布を用いながら、音の振動や質感など聴覚以外でも空間に広がる音を感じて共有し合うということも試みました。
Q2 スプラウトでは、障がいの種類や程度も人によって異なっていたかと思います。その中で、どのようなことを大切にしながら取り組まれましたか?
みなさん重度の心身障害があります。音の捉え方も反応の仕方も様々ですし、もちろん好みも異なります。瞬発的に表現が湧き出る方も、じわじわと繊細に返してくれる方も、それぞれの間合いにその人らしさを感じました。場を温め、お互いの間合いを楽しむことを常に意識しました。影響を受け合って過ごした時間そのものが音楽的だったと感じます。
ワークショップの様子
Q3 楽器を足や腕に付けられるようにするなど、物理的に工夫されているのも印象的でした。
リズミカルに足踏みをする方には、振ると音が鳴る木の実が連なった楽器を、足に付けられるようにしました。彼女のビートから始まったセッションはとても印象に残っています。また手先が動かしづらい方もいたので、手で握って鳴らすマラカスのような楽器は、手首に下げられるようにしました。太鼓のバチもタオルを巻いて太くして持ちやすくしたり、バンドを付けてみたり。みなさんの様子を観察しながら、スタッフ間で知恵を出し合って、工夫しながら行いました。
様々な楽器に触れて楽しみました。
Q4 ワークショップを重ねるなかで、どのような変化がありましたか?
初回はお互いに探り探りだったのですが、回を重ねるごとに参加者の方がどんどん積極的に「やりたい!」という雰囲気になり、舵をとってくれるように。また参加の形は楽器を鳴らすことだけではないと気付かされ、“踊りたい・歌いたい・今はじっと聴いていたい・身体で音を感じていたい”など、各々が自然に音楽の世界に溶け込める空気が生まれていきました。最終回には、これまでワークショップのメインの部屋とは別の小部屋で参加されていた方も、みんなの輪に加わって、楽器を鳴らしてくれて。私たち以上に職員の方が驚いていました。
職員さんとの積み重ねも嬉しかったです。段々と利用者さんに相性の良さそうな楽器の選定や心地良い持ち方をサポートしてくださるようになり、一緒に演奏してセッションのムード作りもしてくださいました。
Q5 最後に、ワークショップのドキュメンタリー映像のみどころと、ご覧になる方へのメッセージをお願いします。
私は一緒に奏でながら、その方の人となりやスプラウトの中での関係性が音となって見えた時にとても喜びを感じました。音、表情、そして施設管理者の佐藤さんが映像の中で語ってくださった言葉からもそれは垣間見えます。是非一緒に探検しましょう!
『音の探検隊2023 in スプラウト』とは
打楽器奏者・若鍋久美子さんが、平塚市にあるNPO法人スプラウトで打楽器ワークショップを行うプロジェクト。2023年7月より、全7回実施。ワークショップの模様を追ったドキュメンタリーは、神奈川県公式YouTubeチャンネル「かなチャンTV」にて配信中。
https://youtu.be/mbSZPJFXxrE?si=fcvc1zCzYWgxfy0B