★web限定記事★ シニア劇団 劇団員対談

共生共創事業の一環として2019〜2020年に設立されたシニア劇団。どのような方がどのような思いで参加しているのか、共生共創通信21号では、劇団員にインタビューしました。同じシニア劇団といえども、劇団のあり方や団員の関わり方の違いで盛り上がったインタビュー。横須賀シニア劇団「よっしゃ!!」のHIROMIさんと綾瀬シニア劇団Haleのじぇいさんの対談を、紙面より拡大してお伝えします。

HIROMIさん(左)、じぇいさん(右)

 

劇団に参加したきっかけ

 

――お二人がシニア劇団に参加したきっかけを教えてください。

HIROMIさん:私は2019年の立ち上げから参加しています。子育てが落ち着いてから芸能事務所に10年ほど所属して、テレビで俳優活動をしたり、事務所内のシニア劇団で公演をしたりしていました。そちらを辞めた後、県の広報で劇団員の募集をみつけて、ちょうど良いタイミングだったので応募しました。

じぇいさん:学生時代に演劇をやっていたのですが、働き始めてから30年ぐらいは忙しくて離れていました。55歳を過ぎて、時間に余裕ができてから、横浜のアマチュア劇団や東京のシニア劇団を経験しています。遠方だったのと、コロナ禍が重なったため長くは続きませんでした。その後、オンラインで落語を習っていた時期もありましたが、やっぱりお客さんの前に立って何かしたいなと思ったときに、綾瀬シニア劇団の劇団員の募集をみつけて、2024年に入団しました。

HIROMIさん(左) (撮影:川島彩水)

 

公演の頻度と日々の稽古

 

 ――公演は年間に何回あり、日頃どのように練習をしていますか?

HIROMIさん:公演は年に2回、7月頃と2〜3月頃にあります。練習は週に2回、火曜日と金曜日に3時間ずつ。公演の前には、土日も来られる人で集まって自主練をすることもあります。最初の1時間はストレッチ、アイソレーション、発声練習をするのがいつものルーティンです。

じぇいさん:公演は年に1回、12〜3月頃です。月に1~2回集まって、プロジェクトリーダーの倉品淳子さんからもらったお題でショートストーリーをつくるなどしています。1回の稽古は4時間。公演の2~3ヶ月くらい前になると練習時間は5時間になり、土日の練習が多くなります。ただ、自主練はほとんどしないですね。

 

――劇団員は今何人ぐらいいるのですか?

HIROMIさん:今37人いますね。70代がほとんどで、最年長が92歳です。

じぇいさん:負けました(笑)。うちの最年長は87歳です。

HIROMIさん:2025年の7月に『竹取物語より かぐや姫』と『泣いた赤鬼』という2つの演目を上演したのですが、『竹取物語より かぐや姫』は92歳の方が主役でした。彼女は日本舞踊をしていた方なので、着物のすっとした立ち姿の美しさは誰もかなわないです。稽古場まで来るのにもバスで30分ほどかかるのですが、付き添いもなく、一人で来て一人で帰ります。セリフも「できない、忘れる」と言いながら、本番になると全部ちゃんと覚えていて、いつも私たちが驚かされます。

 

シニア劇団ならではの苦労

 

じぇいさん:綾瀬シニア劇団のメンバーは25人なのですが、それぐらいが、演出が仕切れるちょうど良い人数じゃないかと思います。昨日教えたことは今日忘れているし、今言っていることを聞いていないし、聞いてもできるまで時間がかかる。同じことを繰り返しやってなんとか公演に間に合う。公演の最中にプロジェクトリーダーの倉品さんが舞台を見ながらホッとした顔をしているのを見て、こちらもホッとしています。

HIROMIさん:よかった、同じような感じで(笑)。1時間かけて練習したのに、なんで今日やったら忘れてんのよ、とか。

じぇいさん:先週まさに「1時間かけてやったのに!」って倉品さんが私を見てひっくり返って足バタバタさせちゃって。申し訳ないな、と落ち込みました(笑)。

HIROMIさん:(笑)。それでもみなさん、やっぱり少しずつ慣れてきて、最終的には舞台を作り上げるんですよね。本番までに自分の気持ちを持っていくというのを、劇団員みんながわかり始めているのだなと思います。

 

劇団の成長を感じて

 

 ――HIROMIさんは立ち上げのときから関わられているとのことですが、どのように変化を感じていますか。

 HIROMIさん:最初40人ぐらいいたのですが、ほとんどの人が演劇の経験がなく、毎週2回3時間の練習を繰り返すことでつなげてきました。みんなの成長ぶりは目覚ましくて、最初のうちは小さくて聞こえなかった声が、今は本当によく通るようになりました。自分の演技プランを語っている姿も見かけます。劇団に来る楽しさを覚え「一生懸命やってこそ、劇団の活動は良いものになるんだ」という思いを共有できているように感じます。
お客さんも年を追うごとに増えているので、それも励みになっていますね。「ここまでお客さんを入れられるだけに、自分たちも成長できた」という実感があるのだと思います。

 

団員も運営に携わるように

 

――HIROMIさんは、団員全体のことを見ているように感じますが、みなさんを取りまとめるようなこともしているのですか?

HIROMIさん:2025年の春から、舞台監督として、稽古の支度や声掛けなど、取りまとめをしています。現在は出演しないで、舞台監督として見る側に回っているので、「出演したいんじゃないの?」と周りは心配してくれるのですが、私自身は今の立場を楽しんでいます。

 

――横須賀シニア劇団では、劇団員が運営にも関わり始めているとお聞きしました。

HIROMIさん:そうですね。3年ほど前に制作部が立ち上がり、今では制作、照明、音響、大道具、小道具、衣装の各班に劇団員が分かれて活動しています。例えば制作部は、パンフレットに載せるための広告を取りに営業へ行き、Webサイトのほか、XやYouTubeで公演のお知らせをしています。
衣装や小道具も自分たちで手作りするほか、音響や照明も劇団員でできるようにと、劇団員自身が機材も動かしています。

じぇいさん:すごい!シニア劇団とは思えないです。

HIROMIさん:元々プロジェクトリーダーの横田和弘さんが劇団河童座を主宰していて、河童座の方たちが音響や照明などをしていました。河童座の方から操作の仕方を教えてもらって、2025年7月の公演ではほとんど自分たちで動かしました。

じぇいさん:綾瀬シニア劇団でも2025年10月頃に、団員の中で劇団の運営に関わるチームをつくりましたが、そこまで進んでいるとは。
私の感覚からすると、横須賀シニア劇団はシニア劇団ではないですね!シニア劇団は、芝居が好きで続けたい人もいれば、なにか面白いことがしたいと思ってたまたま入ってきた人もいる。だから切磋琢磨するというよりは、みんな仲良くして、演出家がそれぞれの持ち味を見つけ出して、各劇団員に役割を与えてくれるものとばかり思っていました。だけど自分たちで照明も音響もやっているというのは、びっくりしました。

HIROMIさん:いや、ありがとうございます。自分たちでやれることはやっていこうというのはプロジェクトリーダーの横田さんの方針ですね。

じぇいさん:お手本になる河童座さんがそばにいるのも大きいですかね。

HIROMIさん:そうですね。さらに、「キャストだけではなく、スタッフとしてここに居場所をつくるのでもいいですよ」ということを最初から言ってくれていることもあるかもしれません。

じぇいさん:お話を聞いていると、本気でやっている横須賀シニア劇団に対して、私たちの場合は、自分たちがやれる範囲で芝居を楽しみたいという人が多いのかなという気がします。「自分たちの創造性が発揮でき、楽しく生きていけることの助けになれば」という集まりになっているような気がするんです。私はどちらのあり方もありだと思っているのですが。

HIROMIさん:いやいや、あまり変わらないですよ。ただ楽しむために来ました、という方ももちろんいて。そんなに厳しくガチガチにやっているわけではありません。ただお金をもらうことに対しては真摯になって、「この値段だからこれでいい、という芝居は見せたくない」という気持ちだけはみんなが持っているように感じます。

じぇいさん:そうですね。そこはお金以上に、観に来る方の貴重な時間をもらっているのだということを私も思っています。

 

参加して良かったこと、難しいと感じたこと

 

 ――シニア劇団に参加して良かったことはありますか?

HIROMIさん:良かったことは、みんなで公演を作り上げて、やったね、良かったねと言い合うことができること。仲間意識ができることですね。うちの劇団では最年長の92歳が、誰よりも前向きに取り組む姿勢を見せてくれます。「あの人があんなに頑張っているのに泣きごと言っている場合じゃない」と感じさせてくれる、そういう人生の先輩に出会えたことも良かったことです。

じぇいさん:やっぱりみんなで一緒に作り上げたものがお客さんたちに喜んでもらえた瞬間は嬉しいです。また一緒に作り上げることで仲間意識が生まれ、他人との良い関わりが広がっているのは良かったことだと思います。

一番上の列、左から2人目がじぇいさん(撮影:泉山朗土)

 

――逆に、難しいと感じることはありますか?

HIROMIさん:与えられた役をうまく消化できず、気持ちが追い詰められてしまうこともあります。そんなときには、どう解消するかを自分の中に見つけておくことも大事だと思います。私の場合は、1日中映画やドラマを見て解消することもあります(笑)。

じぇいさん:参加している人には、演劇経験も身体の状態も様々な人がいます。芝居があまりうまくできなかったり、覚えられなかったりする人でも、今まで生きてきて、いろんなものを背負っている。芝居の能力だけで人を判断することなく、常に仲間に対してリスペクトを持ちながら接していかなければいけないということに気付かされています。

 

これからについて

 

 ――これから劇団の活動を通して実現したいことはありますか?

じぇいさん:活動する私たちが、精神的にも健康に楽しく過ごしていけることが一番ですね。さらに自分たちの公演が、いろんな人たちに元気を与えることができたら、なお良いなと思っています。

HIROMIさん:「出前公演」という名前で、高齢者施設などに行かせていただくことがあったのですが、最近あまりできていないので、そういう活動をこれからどんどん取り入れていきたいです。
また今は横須賀を中心に活動を行っていますが、横須賀だけではなく、いろんなところで公演をしたいです。「横須賀といえば『よっしゃ!! 』があるね」と言われる日がきたらなんて嬉しいだろうと。小さな活動で良いから少しずつ広げていきたいです。

撮影:川島彩水