自宅で楽しむ「道成寺」の世界
今年度から綾瀬シニア劇団の新プロジェクトリーダーに就任した倉品淳子さんは、劇団山の手事情社の女優であり、劇団の内外でさまざまな方と多様な舞台を創ってこられた演出家でもあります。その倉品さんに、「創作活動の中で大切にされてきた作品は何ですか?」と伺ったところ、返ってきた答えの中でもイチ押しが『道成寺』でした。「安珍」と「清姫」の恋物語。清姫が蛇になり、道成寺の鐘の中に逃げた安珍に迫るシーンは特に有名、お能や歌舞伎、映画の題材としても有名。実際に、和歌山県にあるお寺「道成寺」にちなみ、自宅での過ごし方をご提案します。
『安珍と清姫』(1960年 島耕二監督)
「天音山道成寺」は大宝元年(701年)創建の和歌山県最古のお寺。このお寺を有名にした「安珍清姫伝説」の事件が起こったのは延長六年(929年)のことだそうです。
旅の僧・安珍(あんちん)に恋をした清姫(きよひめ)。しかし、安珍に裏切られたと知ると大蛇となって安珍を追い、最後には道成寺の鐘の中に逃げた安珍を鐘ごと焼き殺すという物語は、芸能、文学、美術など、日本の様々な芸術分野で今もなお取り上げられています。
能では『道成寺』『鐘巻』、文楽では『日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)』、歌舞伎では『京鹿子娘道成寺』『二人道成寺』等、道成寺を題材にした作品は「道成寺物」と呼ばれています。
今回ご紹介する映画も「道成寺物」に連なる作品です。
美男の僧、安珍を市川雷蔵、恋に燃える清姫を若尾文子が演じています。昭和の香り漂う映像、とにかく主人公の二人が見目麗しく、身にまとうオーラはまさに銀幕のスター!二人の俳優としての大きさ、強さ、輝きが小さなテレビで観ても溢れるようで、当時映画館で観ていたらいかばかりかと想像してしまいます。
撮影中二人には恋の噂もあったというのが頷けるほどの情熱溢れる演技で蘇ったいにしえの物語。一見の価値あり!